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コラム

ポリヴェーガル理論とは?「なぜ私はこうなってしまうのか」が、神経系から理解できる

「怒りたくないのに、体が反応してしまう」 「その場から動けなくなる、頭が真っ白になる」 「人といると緊張するのに、一人でいると寂しくてたまらない」

こうした反応に、長年「自分の意志が弱いから」「メンタルが弱いから」と自分を責めてきた方は多いのではないでしょうか。

でも、それは意志の問題でも、性格の問題でもありません。あなたの神経系が、あなたを守ろうとして起こしている反応です。

今回ご紹介するポリヴェーガル理論は、そのことを科学的に、そして温かく教えてくれる理論です。

ポリヴェーガル理論とは

ポリヴェーガル理論は、アメリカの神経科学者スティーヴン・ポージェス博士が1990年代に提唱した理論です。私たちの自律神経系——特に「迷走神経(vagus nerve)」の働きに注目し、人間の感情・行動・対人関係のパターンを神経系の観点から説明します。

「ポリ(poly)」とは「複数の」という意味で、迷走神経が複数の経路を持つことを示しています。この理論によって、「なぜ人は危険を感じると固まってしまうのか」「なぜ安心できる環境でないと心が開かないのか」が、神経生理学的に説明できるようになりました。

3つの神経系の状態——あなたは今、どこにいますか?

まず「自律神経」の基本から——実は副交感神経は2種類あった

自律神経について、学校などで「交感神経と副交感神経の2つがある」と習ったことがある方は多いと思います。交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ——活動するときはアクセルを踏み、休むときはブレーキをかける、というイメージです。

交感神経が優位になると心拍数が上がり、体が活動モードに入ります。副交感神経が優位になるとリラックスして、消化や休息が促される。これは正しい理解です。

ところが、ポージェス博士の研究によって「副交感神経にはもう一つの経路があった」ことがわかってきました。私たちがこれまで「副交感神経=リラックス」と思っていたのは、「腹側迷走神経」という比較的新しい経路の働きでした。そしてもう一つ、「背側迷走神経」という非常に古い経路があり、こちらは緊急時に全く異なる反応を引き起こすことが明らかになったのです。

この発見が、なぜ人が「ただリラックスできない」のか、なぜ「無気力・解離・感覚の麻痺」が起きるのかを、初めて神経科学として説明することを可能にしました。

ポリヴェーガル理論では、この3つ——交感神経、背側迷走神経、腹側迷走神経——が階層構造をなし、状況に応じて自動的に切り替わると考えます。

第1の状態:戦う・逃げる(交感神経系)

危険を感じたとき、神経系はまずこの状態に切り替わります。心拍数が上がり、筋肉が緊張し、「何かしなければ」というエネルギーが体に満ちます。不安、焦り、怒り、過覚醒——こういった状態がこれにあたります。

本来は「危険から身を守るための緊急モード」として必要な機能です。しかし複雑性トラウマや慢性的なストレスを抱えた方は、安全な場面でもこの状態が頻繁にオンになってしまいます。

第2の状態:凍りつき・シャットダウン(背側迷走神経系)

戦うことも逃げることもできないほどの危機に直面したとき、神経系は最終手段として「シャットダウン」を起こします。これが背側迷走神経の反応です。無気力、解離、感覚の麻痺、「自分が自分でない感じ」、何もやる気が起きない——これが凍りつきの状態です。

これは副交感神経の一種でありながら、「リラックス」とは全く異なります。動物が天敵に捕まったとき「死んだふり」をするのと同じ、命を守るための非常に古い防衛反応です。「怠け」でも「弱さ」でもなく、神経系が限界を超えたときに自動で発動する、いわば最後のシェルターです。

第3の状態:安全・つながり(腹側迷走神経系/社会的関与システム)

これは神経系が「ここは安全だ」と判断しているときの状態です。穏やかで、人と話したい、笑える、物事に集中できる——そんな感覚がある状態です。

この状態のとき、私たちは自然に人とつながれます。声のトーンが柔らかくなり、顔の表情が豊かになり、相手の言葉に耳を傾けられます。心身ともに「今ここ」にいられる、回復と成長の土台となる状態です。

3つのバランスが、あなたの命を守っている

ここで最も大切なことをお伝えします。

この3つの状態はどれも、「おかしい」状態でも「弱い」状態でもありません。それぞれが生命を維持するために進化の過程で備わった、必要な機能です。交感神経は「行動する力」、背側迷走神経は「限界を超えたときの緊急避難」、腹側迷走神経は「人とつながり、成長する力」——3つが連携することで、私たちは生きています。

問題があるとすれば、3つのバランスが崩れ、「安全」に戻りにくくなっていることです。特に幼少期にトラウマや不安定な環境を経験した方は、神経系が「危険モード」に入りやすく、「安全モード」に戻りにくいパターンが染みついていることがあります。

だから、まず何よりも大切なのは「今の自分がどの状態にいるかに気づいてあげること」です。「また凍りついてしまった」ではなく「今私は凍りついているんだ、神経系が守ろうとしているんだ」と、自分の状態に名前をつけて気づいてあげること——これが、最初の、そして最大のセルフケアになります。

神経系は「意識より速い」——ニューロセプションという仕組み

3つの状態の切り替えは、あなたが意識的に選んでいるものではありません。ポージェス博士はこれを「ニューロセプション」と呼びました。脳が意識的に気づくより速く、神経系が「安全か危険か」を感知して体の状態を変えてしまう仕組みです。

だから、「怒りたくないのに体が反応してしまう」「動きたいのに体が動かない」のは、意志の問題ではないのです。神経系がかつての経験を記憶していて、似た状況に自動的に反応しているにすぎません。複雑性トラウマや幼少期の不安定な環境を経験した方ほど、このニューロセプションが過剰に敏感になっていることがあります。安全な場面でも「危険」と感知してしまう——それはかつての経験が神経系に刻んだパターンであり、今のあなたの弱さではありません。

トラウマ・複雑性PTSDと神経系の関係

複雑性PTSDや愛着の傷を抱えている方の多くは、神経系が慢性的に「戦う・逃げる」か「凍りつき」の状態にあります。「安全・つながり」の状態に戻れる時間が極端に短いのです。

これが、さまざまな症状として現れます。感情の波が激しくコントロールできない(交感神経の過覚醒)、無気力・解離・感覚の麻痺(背側迷走神経のシャットダウン)、人といると緊張するのに一人でいると孤独(安全を感じられない)——こういったことです。

ヴァン・デア・コーク博士の言葉を借りれば、「身体はトラウマを記録する」のです。過去の体験は記憶としてだけでなく、神経系のパターンとして体に刻まれています。だからこそ、「頭で理解する」だけでは変わらず、神経系そのものに働きかけることが必要になります。

日常でできること——神経系を「安全」に戻す実践

ポリヴェーガル理論の大切な視点は、「安全を感じる体験を少しずつ積み重ねることで、神経系は変わっていける」ということです。以下に、日常で取り入れやすい実践をいくつかご紹介します。

呼吸——特に「長い吐く息」

吐く息は副交感神経(腹側迷走神経)を活性化させます。息を吸うより、吐く時間を長くすることを意識するだけで、神経系が「安全モード」に向かいやすくなります。たとえば4秒吸って、6〜8秒かけてゆっくり吐く、それだけでOKです。

「今ここ」に五感を向ける(グラウンディング)

凍りつきや解離状態のとき、神経系は「今・ここ」から離れています。足の裏が床についている感覚、手のひらの温度、今見えているものの色——こうした五感に意識を向けることで、神経系を現在に引き戻すことができます。

安全な人・場所・もの(セーフティキュー)を意識する

ポリヴェーガル理論では、「安全のサイン(セーフティキュー)」を意識的に増やすことを大切にします。穏やかな声のトーン、柔らかい表情、好きな音楽、安心できる場所——これらが神経系に「ここは安全だ」と伝えるシグナルになります。

自分の状態に「名前をつける」

「今私は凍りついている」「今は戦う・逃げるモードだ」と、自分の神経系の状態に気づいて名前をつけるだけで、神経系への影響は変わります。気づくことは、変化の第一歩です。

ポリヴェーガル理論からスキーマ療法へ

ポリヴェーガル理論は、いわば「自分の神経系の地図」を手に入れるための理論です。「なぜ私はこうなってしまうのか」がわかると、自己批判が少し和らぎ、自分への見方が変わっていきます。

そして、神経系がある程度「安全」を感じられるようになったとき——そこが、より深い心理的な作業に入るための準備が整ったタイミングです。

当カウンセリングルームでは、まずポリヴェーガル理論の視点から神経系の状態を理解し、安全を感じる力を育てながら、スキーマ療法で幼少期から積み重なった深いパターンへとアプローチしていきます。

「根本から変わりたい」「長年の生きづらさに打つ手を見つけたい」——そんな方は、ぜひ一度初回相談をご利用ください。

スキーマ療法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。→(スキーマ療法とは?長年の生きづらさ・複雑性PTSD・愛着障害に、根本からアプローチする心理療法

こんな方にポリヴェーガル理論が届いてほしい

・感情や体の反応が自分でコントロールできないと感じる ・「なぜこうなってしまうのか」が長年わからなかった ・複雑性PTSD・解離・感情調節の困難を抱えている ・人といると疲れるのに、一人でいると孤独を感じる ・緊張・過覚醒・無気力が慢性的に続いている ・「意志が弱い」「メンタルが弱い」と自分を責めてきた

あなたの反応は、あなたのせいではありません。神経系が、あなたを守ろうとしてきた証です。その神経系を責めるのではなく、少しずつ「安全」を感じていく——それが回復への道です。

参考文献

吉里恒昭 著『イライラ、不安、無気力、トラウマ……負の感情がラクになる「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本』日本実業出版社、2024年

ベッセル・ヴァン・デア・コーク 著/柴田裕之 訳『身体はトラウマを記録する——脳・心・体のつながりと回復のための手法』紀伊國屋書店、2016年

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