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コラム

トラウマ・愛着障害について

過去の辛い経験やトラウマに苦しんでいませんか?心の傷は時間が経っても自然に癒えるとは限りません。「最近、些細なことで不安になる」「人間関係がうまくいかない」「突然の感情の波に襲われる」「安心して眠れない」といった症状は、過去のトラウマや愛着の問題が関係しているかもしれません。

トラウマとは何か

トラウマとは、個人の対処能力を超えた強い恐怖や無力感を伴う体験によって生じる心理的な傷つきです。一般的に「トラウマ」と聞くと大きな災害や事故を思い浮かべるかもしれませんが、実はもっと身近なところにもトラウマは存在します。対人関係での傷つきやいじめ、仕事でのパワハラ、家庭内での出来事、医療処置など、様々な体験がトラウマとなり得るのです。

トラウマは大きく分けて、一度きりの出来事で生じる「単回性トラウマ」と、長期にわたって繰り返し経験する「複雑性トラウマ」があります。後者は、特に対人関係や自己認識に深い影響を与えやすいという特徴があります。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、日本では総人口の約1.3%がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するとされています。しかし、診断基準に満たない「小さなトラウマ」を抱える人はさらに多いと考えられています。

トラウマが心と体に与える影響

トラウマの影響は、心理面だけでなく身体面にも及びます。フラッシュバックや悪夢などの再体験症状、トラウマを想起させるものからの回避、過度の警戒心や驚愕反応、気分の落ち込みや罪悪感などの心理的症状に加え、睡眠障害、慢性的な疲労感、身体の痛み、消化器系の問題など、様々な身体症状として現れることがあります。

最新の脳科学研究によると、トラウマは脳の機能にも影響を与えることが分かっています。恐怖や危険を感知する脳の部位である扁桃体が過敏になり、日常的な刺激に対しても過剰な恐怖反応が生じやすくなります。また、感情調整や判断を担う前頭前野の機能低下、記憶の形成と統合に関わる海馬の変化なども確認されています。

ベッセル・ヴァン・デア・コークは著書『身体はトラウマを記録する』で、「トラウマは心だけでなく、身体にも記憶される」と述べています。トラウマ体験は言葉にならない身体感覚として残り続けることがあるのです。

愛着障害とは

愛着とは、子どもが養育者(主に親)との間に形成する情緒的な絆のことです。この絆が安定していると、子どもは世界を安全に探索する「安全基地」と、困ったときに頼れる「避難所」を持つことができます。しかし、養育環境が不安定だったり、養育者からの適切な応答がなかった場合、不安定な愛着パターンが形成されることがあります。

愛着研究の第一人者である精神科医の岡田尊司氏によれば、不安定な愛着スタイルを持つ人は成人の約3割以上にのぼるとされています。特に、幼少期に虐待やネグレクト、親の精神疾患、家庭内暴力、親の不在などを経験した場合、愛着の問題が生じやすくなります。

愛着の問題は、大人になってからの対人関係にも大きな影響を与えます。主に以下のような形で現れることがあります:

  • 不安型愛着スタイル:見捨てられることへの強い不安と恐れ、過度な承認欲求、相手の気持ちや行動を過剰に監視する傾向
  • 回避型愛着スタイル:親密さや依存を避ける傾向、感情表現が少なく自己開示を控える、過度な自立性と他者への不信感
  • 混乱型愛着スタイル:愛着対象に対して矛盾した行動(接近と回避の両方)、対人関係における予測不能な反応パターン

中尾達馬・加藤和生の研究(2004)によれば、これらの愛着スタイルは幼少期に固定されるわけではなく、安全な関係性や適切な心理療法によって変化する可能性があることが示されています。

トラウマ・インフォームドケアという視点

近年注目されている「トラウマ・インフォームドケア」は、トラウマの影響を理解し、再トラウマ化を防ぎながら支援するアプローチです。このアプローチでは、「問題行動」を「何があなたに起きたのか」という視点で理解し、安全と安心を最優先にします。

野坂祐子氏は著書『トラウマインフォームドケア』で、「トラウマのメガネをかける」ことの重要性を述べています。これは、一見理解しがたい行動や反応の背景にトラウマの影響があるかもしれないと考える姿勢です。

トラウマ・インフォームドケアの実践では、以下の原則が重視されます:

  1. 安全の確保:物理的・心理的・感情的な安全を最優先にする
  2. 信頼と透明性:支援プロセスの明確な説明と自己決定の尊重
  3. 協働とエンパワメント:クライアントを問題の専門家として尊重する
  4. 選択肢の提供:クライアントが自分で選択し、コントロール感を持てるようにする
  5. 強みの重視:問題だけでなく、リソースや強みにも焦点を当てる

このアプローチは、医療・福祉・教育など様々な分野で取り入れられるようになってきており、「問題」や「症状」の治療ではなく、「人としての全体性の尊重と支援」を重視します。

回復への道のり

トラウマや愛着の問題からの回復は、一直線ではなく、段階を踏むプロセスです。トラウマ研究者のジュディス・ハーマンの研究によれば、トラウマからの回復には安全の確立、トラウマの記憶と処理、日常生活への再統合という段階があります。

特に初期段階では、安全感の確立が最も重要です。安全で信頼できる関係性の中で、少しずつ自分自身や他者、世界に対する見方を再構築していくことができます。

回復のプロセスでは、以下のようなことが支えになります:

  • 自己理解と自己受容:トラウマ反応は「異常」なものではなく、強い体験に対する正常な反応であると理解すること
  • 対処スキルの習得:感情調整、ストレス対処、安全なグラウンディング技法、境界線の設定など
  • 安全な関係性の構築:信頼できる人との関係を通じて、新たな対人関係のパターンを学ぶこと
  • 強みとリソースの発見:自分の中にある強みや資源に気づき、それを活かすこと

専門的なサポートを受けるタイミング

トラウマや愛着の問題で以下のような状況がある場合は、専門家への相談を検討するとよいでしょう:

  • 日常生活や仕事、人間関係に支障が出ている
  • 強い不安や緊張感が継続している
  • 感情の調整が難しく、突然の感情の波に襲われる
  • 自分の反応や行動について混乱や困惑を感じる
  • 安心して眠ることが難しい
  • 身体の不調が続いている(頭痛、胃痛など)
  • 人間関係で同じパターンを繰り返してしまう

札幌カウンセリング『優しい詩』のアプローチ

札幌カウンセリング『優しい詩』では、トラウマ・インフォームドケアの視点から、安全と安心を最優先にしたカウンセリングを提供しています。過去のトラウマに深く立ち入るような介入よりも、現在の安全と安定を確立することを重視し、あなたのペースを尊重したサポートを心がけています。

特に以下のような点を大切にしています:

  • 「今・ここ」での安全感の構築
  • 日常生活における安定したリズムと構造の確立
  • ストレス反応や感情を調整するためのスキル習得
  • 自己をケアする方法の習得
  • 尊重と受容のある関係性の経験

無理に過去を掘り下げることはせず、現在の生活の質を高め、自分自身との関係や対人関係を改善するお手伝いをします。

心の傷を抱えていても、豊かで意味ある人生を歩むことは可能です。つらい気持ちを一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けてみませんか?

トラウマや愛着の問題について、より詳しい情報は【こちらのページ】をご覧ください。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット (2024) 「PTSD」, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-06-001.html
  2. 野坂祐子 (2019) 『トラウマインフォームドケア “問題行動”を捉えなおす援助の視点』日本評論社
  3. 岡田尊司 (2022) 『愛着障害と複雑性PTSD』光文社
  4. 日本トラウマティック・ストレス学会 (2023) 「PTSDとは」, https://www.jstss.org/ptsd/
  5. ジュディス・ハーマン著, 中井久夫訳 (1999) 『心的外傷と回復』みすず書房
  6. ベッセル・ヴァン・デア・コーク著, 柴田裕之訳 (2016) 『身体はトラウマを記録する』紀伊國屋書店
  7. 中尾達馬, 加藤和生 (2004) 「成人愛着スタイル尺度(ECR)の日本語版作成の試み」『心理学研究』Vol.75, No.2, pp.154-159

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